キミは許婚


外は料亭の明かりが灯るのみで真っ暗だった。


そのわずかな明かりの側で柚野さんは黒塗りの車と共にあたしを待っていた。



「お待ちしておりました」



あたしを一見すると深く頭を下げ、後部座席のドアを開けてくれる。


お礼を言って乗り込もうとすると、



「出口まで社長はお見送りになりましたか?」



と、問いかけられた。



「いいえ、あたしが離れの部屋から出るとすぐに扉を閉められて……」


「……随分と余裕がない」


「え?」


「いえ、こちらの話です」



柚野さんに笑顔を向けられるとそこから先へ踏み込めなくなる。
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