キミは許婚
柚野さんの冷笑に打ちひしがれると同時に、聖をもうまく手玉にとる性格を尊敬してしまう。
車を降りた柚野さんはいつもの柚野さんらしく、車のドアを開けて低姿勢で迎えてくれた。
「爽は一体誰の味方なんだよ。俺の秘書だろ?」
「えぇ、上条社長の秘書に戻らさせていただきました」
「なら俺で遊ぶな。あと明をいじめるな」
「……なぜ?」
柚野さんは車を降りた聖をキョトンとした顔で見ている。
こういうとぼけた顔は初めて見たな……なんて思っていたら……
「確かに私は上条社長の秘書ですが……私は私だけの味方ですよ?」
目を逸らしたくても逸らせない、身体が固まってしまうような見慣れた氷点下の微笑みに変わった。