水《短》




どれほど歩いただろうか。

気付けばもう、目的の場所まで来ていた。


見上げれば気高く、私を見下ろしている、山。


陽に照らされる緑が、その厚い門を開き、私を迎え入れてくれた。


柔らかな土にはる太い根を踏み、枯葉を踏みながら、山中を奥へ奥へと進む。

じっとりと、額に汗をかいていた。

それを手の甲で拭い、歯を食いしばりながらひたすら歩いた。


葉と葉の間、燦燦と照りつける太陽が、私の背を焼いた。


まるで、責め立てているようだ、と思った。






これからわが子を捨てる、私を。




.

< 4 / 10 >

この作品をシェア

pagetop