水《短》


涼しげな水音を立てて、木漏れ日を受けた透明の水がうねっている。


とりあえずここを進もう、と私は履いていたパンプスを脱ぎ捨てた。

ヒールの高いこのパンプスは、おそらく私のお腹にいるこの子の父親である男が、去年の誕生日に買い与えてくれたものだ。

ずっと欲しかった赤いパンプスを手に、あのときは柄にも無くはしゃいだ。


思えばあの男からの、最初で最後のプレゼントだった。





だが、もう必要無い。





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