―ユージェニクス―
拜早は一度停止し、追ってくる精鋭達へと振り返った。
「?!」

黒服らが反応した隙、瞬間拜早の指の間に光る刃が現れる。
それぞれの指の間に四本のシャープナーナイフ。
相手が身構える間を与えず、拜早は自身の顔の前でそれを構え全てを鋭く打ち放った。
「ガッ!!」
「コィツ?!」
続けに逆の指先からも四本放ち、間髪入れずポケットから取り出した金属の塊。
細い止め具を口で引き抜き、投げる。
「!!!」

金属は黒服達の足元で爆発。煙りは紫の閃光…電気を帯び、バチバチと音を立てた。
黒服らに爆発の衝撃と、威嚇であったナイフの存在も手伝って、弾く電流が身体を襲う。
「ぐぁアァ?!」
拜早へ向かって行った精鋭は皆その場に崩れ落ちた。
「は?!ちょっ…もう!!頼りにならないわね!!」

あっという間に片付けられた精鋭達に対し、峯は地団太を踏む。

拜早が武器とするのはナイフ捌きと体術だが、咲眞に「何でそんな事出来るの」と言われた事があった気がする。
(あいつはあいつで爆弾魔だけどな…)

拜早と峯の間には倒れた黒服の群れ。
峯はあからさまに溜め息を吐く。

「…仕方ない、アタシが相手してあげるっ!」
飛び出した。
「!」
拜早も更にジャックナイフを構え、投げる。
「甘いわね!」
峯は片手でそれを弾いた。腕に鉄筋でも仕込んでいるのか。
拜早の顔が険しくなると同時に峯の電光石火の横蹴り。
「ぐッ…!!」
拜早は腕を縦にして防いだが骨にまで響く様な鋭さだ。
耐えながらも空いた手に再び別のナイフを現し、峯へ横薙に切り掛かる。
「アンタどんだけナイフ持ってんのっ?」

峯は素早く後ろに身を引いて刃を避けた。

…咲眞に渡された爆弾はあれ一つ。峯に対しては肉弾戦で凌ぐしかない。

「あんたこそ、よくそんな格好で動けるな…」

峯はヒールの靴に細かな網タイツ、奇抜なタイトミニスカート。
長身故に妙な色気と威圧感が漂う。
「あら、オシャレはどんな時でも欠かさない。女はいつも着飾るものでしょ?」
「あんたが女を語るなよ…」
肩口の髪をはらいつつ得意気に言った峯だったが、拜早はうんさ臭くて嫌気がさした。


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