―ユージェニクス―
しかしどうする。
このまま峯とやり合ったところで素直に勝たせてはくれないだろうし、今は時間が惜しい。

そんな拜早の思惑を裏切る様に、新たに峯の後ろからやって来た者……

「アッ峯〜〜〜」
「げっ……」

思わず拜早は顔をしかめる。
新手の精鋭達を引き連れて来たのは、でっぷりとした脂肪を抱える巨漢、高城。
決して軽くない足取りで近付いてくる頭の悪そうなその男も、峯と同じポジションの人間だ。

「早いわね高城、茉梨亜はきちんと届けたの?」
「モチロンばっちリだョ〜〜…ン?」

…これはますます悠長にしてる場合じゃない。

「峯、だぁレ?この子」

高城は身体と同じく無駄に丸々とした目を開き拜早を見た。
相変わらずすっとぼけた奴だ。

「だぁれって…侵入者だけど前屋敷に居た子じゃない。高城覚えてないの?」
峯がそう説明したが、高城は首を傾げる。

「……忘れタ!」
「…アンタほんとにアタシと食べる事しか興味ないのねぇ」

「うん」

「「うん って…」」

拜早と峯が怪訝な顔をしてハモる。

峯より頭一つ下の高城だが、身体の幅は峯の四倍くらいある。こんな奴が攻撃を仕掛けてくるものだから、並大抵の身体じゃ押し潰されてしまうのだ。

「ぇえーと、とにかク侵入者なんだかラ捕まえてオシオキすればイーんだょネ?」
拜早の焦りを差し置いて高城はドスドスと前に出る。

「まぁね…なんだか勿体ない気もするけどぉ。やっちゃって高城」
峯の言葉にニタリと笑い、高城は突撃した。

速い。巨体に不似合いな身軽さは、これらの脂肪を支える筋肉もかなり持ち合わせているという事になる。

「クッ!!」
拜早は腕を十字にして高城のタックルを防いだが、踏み止まれず吹っ飛ぶ。
それでも倒れずに体勢を立て直した。
「!!」
続けに黒服達が一斉に拜早へ迫る。今度はそれぞれ武器持ちだ。
「ォラァ!!」
先頭の黒服が鉄の警棒を思い切り振り下ろす。拜早はそれを手刀の受け身で流し、相手のガラ空きだった横っ腹に蹴りを入れた。
こいつの後ろにはまだ大量の黒服が迫っている……更に拜早はシャープナーナイフを数本構えて素早く投げ打った。


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