―ユージェニクス―
ここの戸締まりをするからと少年達は先に送り出された。
怪我の治療は完璧だと思う。
しかし管原もそうなのだが、研究所の人間は研究所に対してかなり口が堅い。
「なぁ、管原さんはほんとに俺達の事思って、黒川んとこに警察けしかけたんかな」
診療所からの帰り道、拜早が口を開いた。
「…と思いたいよ。でもなら管原さんは屋敷に来なくてもいい。それをわざわざ勅使川原さんと来たって事は、黒川の所に研究所と関わる何かがあった……それか黒川自体が研究所と繋がってたか、どちらにしろ寝耳にミズだね」
スラムの顔黒川が外界の研究所と繋がっていた…なんて、笑えない仮説だ。
あれだけスラムは外界から隔離され、研究所も保護地区とは関わらないと言っていたのに。
「……ま、被験者に勝手に拜早や僕が選ばれてる辺りおかしいんだけどね。協力する、なんて一言も言ってないし」
「ああ。勝手だな研究所は……」
ただ……研究所が建っているのはスラムの中心。
今の今まで無法地帯だった場所。
「まさか……それが狙い?」
「は……?研究所が法律無視したい為にここに建てたとか?でも無理あるだろそれ」
二人して眉間を寄せる。
スラムに建てたところで研究所は外界の物だ。
それを……曖昧にさせる為にこの場所を選んだ?
「無法なら好き勝手出来る……」
ちらりと咲眞は相方の髪を見る。
研究所のおかげで色素が無くなった髪。
「まぁな…でも詮索すんなって言われたし、考えても分かんねぇか」
そして咲眞は拜早の足を見下ろす。
闇の中でも白い包帯はよく見えた。
「足……大丈夫?」
「え?あぁ、痛くもないし、普通に歩けるぞ」
結局あやむやな真意のまま。
ただ怒涛の一日だった。
黒川、茉梨亜、研究所。
それは一人足りないままの友達と。
どこか妙な点を残しながら幕を閉じる。
闇夜の月は暗雲に隠されていた。
照らすものが無ければ何が蠢いているかも分からない。
そう、言い聞かせる様に。