―ユージェニクス―
「昨日弾くんがここ出てった後、あの金髪のおじさんが来たんだから!」

「そうかぁもう塔藤もおじさん世代に突入かー」

何故か感慨に浸る管原は、この状況では的が外れている。

「弾くん聞いてるの!?」

そんな態度なものだから、茉梨亜は噛み付かんばかりに管原を咎めた。


「ハイハイ、拜早はな……ちょっと協力して貰ってるだけだ」


「……」


そのちょっとが、どれ程のものなのか。


茉梨亜は眉を顰めて管原を覗き込む。


「弾くん」

「なんだ?」


「嘘付かないでね」


「俺が嘘付いた事あるか?」


管原はやはり、どこかおどけた雰囲気を崩さない。
今はこの態度がもどかしかった。


「んもうっだから、研究所って何してるの?」

「知らないのか?医療研究だよ」

「それは分かってる!知りたいのは詳細よしょーさい」

むすっと腕を組んでみる。
こうなったら直球質問で管原が口を割るまで粘ってやるとか思ったのだが

「それはガキには教えられないな〜〜」

などとあからさまにかわされた。

「なっ何よそれ!あたしガキじゃないもん!」

「ほーう」

「そっそれに拜早が協力してるなら、同い年のあたしだって内容は聞ける筈じゃない!」

そう捲くし立てると一瞬管原は口をつぐんだ。


「ほらっど〜なの?弾くん」

「……それはソレ、これはコレだ!」

この男、いい加減張り倒してやろうか……


「茉梨亜」


と思ったところに、低い声色で目を見られた。


「な……何よっ」


「拜早の事は、仕方がない。俺もどうにかしてやりたいのは山々だが流石に権限が違う……研究所はややこしいんだ」

軽く溜め息を吐いて、再び飄々とした顔になる。

「あれには関わるな。一般人が首突っ込めば、どんな排除をされるか怪しい」


だが発せられた声は、真面目そのものだった。


「嫌な思いをするぞ」






< 289 / 361 >

この作品をシェア

pagetop