―ユージェニクス―

エレベーターホールに掲げられたマップには、確かに薬剤課フロアである表示がされてある。

「じゃ、行こうか!」

「あ、あのっ」


律子は間宮の背を呼び止めた。

薬剤課は前回少し見学し、多少現役研究員と挨拶もした――



……としたら、まずい。


「どうしたんだい?」

「え…と、前回薬剤課の方は案内して頂いたんです!だからあたし……そのプロジェクト、星乾症に興味あります!間宮先生はどんな事されているんですか?」

無意識に身振り手振りを付けながら律子は間宮を覗き込む。


「課から引き抜かれたという事は凄い事と思いますから!」

妙に拙い言い回しが一瞬気になったが、だが間宮は褒められたと思ってニヤリと口角を上げる。


「まぁね!多数所属するここの薬剤課で引き抜かれたのは僕だけさ!」

「素晴らしいですね!」

「ああ!皆羨ましがっていたよ!プロジェクトに関われるなんて名誉だからね!」

気を良くしたのか間宮はかなり笑顔だ。

そこを律子は畳み掛ける。

「先生、あたし先生が働いている照合処理班が見たいです!是非見学させてください!」

「いいとも!」

見事に二つ返事である。

「君は熱心そうだし……僕の助手になってくれてもいいよ!まぁ薬剤課のみに限るが……プロジェクト関与はどうしたって上からの推薦がいるから」


……つまりは余程企業秘密的なプロジェクトなのだろう。

だが、『星乾症』特効薬精製の事を新人社員・律子に渡した資料に記載してあるというなら、あまり事柄は秘密染みてはいない……

結局どうあれ、プロジェクトの“詳細”を知らされるのは、選ばれた社員のみという事か。


(星乾症……一体どんな病気?)


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