―ユージェニクス―
泉はこの保護地区研究所の建築物調査で派遣された社員だった。

築五年以上経つこの建物も隔年に定期検査があり、今年は泉が抜擢された。

検査と言っても難しい話ではない。
学校や病院、オフィスビル等の特殊建築物は必ず行っているもで、建築物の中に組み込まれる電気や水道、空調などの設備を検査するのである。


泉の置いていた四角い装置もそういった仕事の計器……らしい。



「でも同業者が来るなんて、聞いてなかったけど…」

そう泉が呟いた言葉は折笠には聞こえなかった様だ。

同じ建物に違う建築調査の人間が来ているなんて少し妙ではある。

この様な研究所やらの施設には、普通はお抱え業者というものがあるはずだが……


「……二つの会社に建築調査を依頼してるって事?なんか不思議だな」

「何か?」

折笠が振り向いたので慌てて笑顔を作る。

「なんでもないわ。さ、上の階に行きましょうか」


こくりと頷く折笠の顔がどこかあどけなく見えた。

(年上……とは思うけどね)













間宮が所属するという記録照合処理班の研究室……


律子にとって全く理解出来ない機械が所狭しと置かれている。

故に部屋がそう広くない様に見えるのかもしれない。

他に事務机にパソコン。
白衣を着た研究作業員は、不可思議な画面の文字列を凝視してはレポートを録っている。


「ここが作業場だよ!」


間宮は喜々として両手を広げ、別の研究員に邪魔ですとあしらわれていた。


「なんか…見た事ないモノばっかり。どういう作業をしてるんですか?」

「うん、基本的に収集班から送られてきたデータを過去の物と照合して、良い物を確立させていくんだ。データは膨大だからね……かなり大変だよ」

と言うものの、間宮の表情からやり甲斐のある作業だと見てるとれる。

「へぇぇ…そのデータってどういうのなんです?」

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