―ユージェニクス―
何の気無しに訊ねた律子だったが、瞬間間宮は挙動不審になった。

「えっいや、それは……まだ秘密さ!」

「え、どうしてですか?星乾症に関係するデータなんですよね?」

律子は思わずきょとんとする。
秘密にされても今更の様な気がするが……


「あ、いやほら!君はまだ新人だから……説明してもきっと解らないだろう!?」

明らかに間宮の態度が妙だ。
「しまった」という心情が顔に出ている。

だが律子には何故間宮が焦っているのか全く分からない。


「……先生、あたし先生の助手として働きたいんです!仕事の内容とか早く飲み込める様に……是非教えてくださいっ」

キラキラと詰め寄る律子に、間宮はうむむと眉を寄せる。

「き、君は熱心だね……ま、まぁ……絶対口外しないというなら……いいかな」

ちらりと間宮が周囲の同僚に目を向けると、皆自分の仕事に没頭していた。

間宮は律子に近寄り小声で言う。

「これ話すの、本当は上の許可がいるんだよ」

「……大丈夫です先生、私口は堅い方です!」

律子は更に念を押し、そして訊ねる。
早く詳細を知りたかった。

律子は……そう、予習が好き、だから。


「それで、このデータは一体……!」

「む……これはある被験者が採取したDNA達なのさ」


言って、間宮は英数字が羅列する液晶画面を見やる。


「DNA……?それがあの星乾症と関係するんですか?」

しかも“被験者が採取”という意味合いが不可思議だ。

「いやいや、これはだね」

「間宮先生」


不意に背後から声が掛かった。


「……!」



驚いて律子が振り向くと、研究所にそぐわない髪色をした、長身の男が立っている。


「おや……塔藤君じゃないか」
間宮の顔がいやに怪訝そうになる。が、口調はこれが至って普通の出来事として対応していた。

「なんだい?わざわざこっちに来る用でも?」

間宮の口調に刺が入る。

仲が悪そうな……というか、間宮が塔藤を好いていないのは律子でもすぐに理解出来た。


律子は口をつぐみ、現れた塔藤という男から目を逸らす。

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