―ユージェニクス―
咲眞は一つのディスプレイを見やった。


俯瞰の状態で少し粗い画像の中には、いつもの人影達が映っている。

…そこへ、ふいに画面に現れたもう一つの人影。

「…?」

鮮明でなくともその訪れた人物が妙な白髪である事は分かる。

「……拜早」

見覚えのあるその人物をすぐに理解し、咲眞は目を細めた。










一つ階上へ上がると同時に、拜早は目を丸くしていた。

自分達がここを使っていた時は明らかに無人の場所だったのだが…

「ぁあ?なんだォマェ」
「どっから入って来たよ?」

「そりゃこっちの台詞だって…」

男達の雑な応対に対し、拜早は小さな呟きを返す。

二階のホールには頭数の多い男達が我が物顔で陣取ったり座り込んだりしていた。
男といっても拜早より二、三年上くらいといったところだが。

彼らは拜早に目を留めたところで、テンション高めに喋りだす。
「ちょっこいつ超白髪なんだけど!」
「やっべー白のカイブツじゃね?!」
「(……)」
拜早はあからさまに分が悪そうな顔をした。
勝手に白の怪物話題で盛り上がりだした彼らをスルーする事にして、拜早は再び上り階段に足を掛ける。

「あっおーぃちょ待てよ、おまえこんなとこに何しに来たよ?」
ホールから去ろうとする拜早に彼らの一人が遠慮もなく駆け寄って来た。
それを若干不機嫌そうに拜早は返す。
「…人を探しに」
「おーいこいつ人探しに来たんだってよー!」
わざわざ仲間に報告する男を見上げ、別に言わなくてもいいのにと項垂れながら嫌々口を開く拜早。
「…ほっといてくれないすか?急いでるんで」
「まーそう言うなよ〜どっから入って来たの?ここ俺らの縄張りなんだよね」

いつからそういう事に…
と拜早はかなり変な顔をしたが、代わりに自分からも質問を投げた。
「…あんた達だってどっから入ったんだよ」
「ん?俺ら壁伝い。な?」
「そーそ。瓦礫攀じ登ってそこの窓から入るんだぜ、すげーだろ」
確かに凄いわとか思いながら、拜早はさっさとこの場から抜けようと身を翻す。
「じゃ俺はこれで」
が、いきなり肩を掴まれた。
「なーおまえマジで白のカイブツなんじゃん?」
「こりゃーセケンの為に退治しねぇとなぁ?」

< 75 / 361 >

この作品をシェア

pagetop