テディベアは裏切らない
一ノ瀬レナは、高校に入ってできた、きっと、親友になれると思った、友達だから。だから、彼女の隠し事に気づいた時に、どうしようもなくて、けれど自分で動くのが怖くて、裁縫部に――壮馬くんにお願いした。
私と壮馬くんの関係はあまり、レナちゃんには深く知られたくない。
「アイツ、なんなわけ? つーかだれさ?」
と、壮馬くんのことを知らないほたるちゃんは眉間にしわを寄せていた。ほたるちゃんは真っ正面か向かってこないタイプが嫌いなんだ。その点、壮馬くんはもともとの性格から回りくどいから……たぶん、あの舌打ちがなくても馬が合わない。
「許したげて。彼、中学の時からあんなだから」
と、私がフォローを入れてあげるしかなくて、そのせいでまた、
「中学の時から知り合いなの? じゃあ、あの舌打ちにも意味あるわけ?」
「……たぶん、ないよ。意地悪なんだ、壮馬くんって。もういいじゃない、この話は」
話がループしそうになるのを、無理やり食い止めるしかなかった。
話題はいくらでもある。
今日も暑いってことや、間近に迫っている期末テストのことや、その先の夏休みのことや、いま手に持っているパンについての批評とか、あと、女の子同士ならではの話題とか。
横道なんて、いくらでもある。
私は今日も、自分の話はしない。自分の意見も、言わない。
私と壮馬くんの関係はあまり、レナちゃんには深く知られたくない。
「アイツ、なんなわけ? つーかだれさ?」
と、壮馬くんのことを知らないほたるちゃんは眉間にしわを寄せていた。ほたるちゃんは真っ正面か向かってこないタイプが嫌いなんだ。その点、壮馬くんはもともとの性格から回りくどいから……たぶん、あの舌打ちがなくても馬が合わない。
「許したげて。彼、中学の時からあんなだから」
と、私がフォローを入れてあげるしかなくて、そのせいでまた、
「中学の時から知り合いなの? じゃあ、あの舌打ちにも意味あるわけ?」
「……たぶん、ないよ。意地悪なんだ、壮馬くんって。もういいじゃない、この話は」
話がループしそうになるのを、無理やり食い止めるしかなかった。
話題はいくらでもある。
今日も暑いってことや、間近に迫っている期末テストのことや、その先の夏休みのことや、いま手に持っているパンについての批評とか、あと、女の子同士ならではの話題とか。
横道なんて、いくらでもある。
私は今日も、自分の話はしない。自分の意見も、言わない。