テディベアは裏切らない
彼女は変わった。もともと能力のある人だったから、自傷をやめてからは、めきめき行動力を伸ばしていた。たぶん来年は、学級委員に押し上げられるかもしれない。クラスの人気も、必然的に獲得していってるから。
「ねえ、いまの舌打ち……なんのつもりなわけ? 小百合がアンタに、なんかした?」
立ち止まって、振り返って、真っ黒いカラスのような瞳でレナちゃんを見た壮馬くんは、
「……そいつに聞けよ」
とだけ答えた。レナちゃんがさらに追求する前に、きびすを返して行ってしまう。
どうしようもなく意地悪なんだ、彼は。本当はとても優しいのに。だれの、どんな悩みでも即座に見抜いてしまう感性を持つ彼なのに、私にはわざと意地悪。
――そろそろ、痺れを切らしているんだ。いつまで経っても傷を癒させない私を、今か今かと待っているから。
だけど壮馬くん、アナタの優しさは受け取れません。その意地悪にも、負けてあげられません。ごめんなさい。
「……なんなの、アイツ。小百合、壮馬と知り合いなわけ?」
と、腰に手を当てながら鼻息を吹くレナちゃんに、少し苦笑してみせる。
「ちょっとだけ、ね」
彼女には、私が一ノ瀬レナのことを裁縫部に依頼したことを、知られたくない。本人だからというのもある。でもそれ以上に、私のお節介を彼女に知られたくない。
私は禁忌を犯した。中学生だったあの日。彼女を殺してしまった時に、誓ったんだ。もうよけいなお節介は焼かない。でも、破ってしまった。
「ねえ、いまの舌打ち……なんのつもりなわけ? 小百合がアンタに、なんかした?」
立ち止まって、振り返って、真っ黒いカラスのような瞳でレナちゃんを見た壮馬くんは、
「……そいつに聞けよ」
とだけ答えた。レナちゃんがさらに追求する前に、きびすを返して行ってしまう。
どうしようもなく意地悪なんだ、彼は。本当はとても優しいのに。だれの、どんな悩みでも即座に見抜いてしまう感性を持つ彼なのに、私にはわざと意地悪。
――そろそろ、痺れを切らしているんだ。いつまで経っても傷を癒させない私を、今か今かと待っているから。
だけど壮馬くん、アナタの優しさは受け取れません。その意地悪にも、負けてあげられません。ごめんなさい。
「……なんなの、アイツ。小百合、壮馬と知り合いなわけ?」
と、腰に手を当てながら鼻息を吹くレナちゃんに、少し苦笑してみせる。
「ちょっとだけ、ね」
彼女には、私が一ノ瀬レナのことを裁縫部に依頼したことを、知られたくない。本人だからというのもある。でもそれ以上に、私のお節介を彼女に知られたくない。
私は禁忌を犯した。中学生だったあの日。彼女を殺してしまった時に、誓ったんだ。もうよけいなお節介は焼かない。でも、破ってしまった。