テディベアは裏切らない
「私を捕まえて、どうするつもり?」

「……壮馬のとこに、連れてく」

「イヤだな。そうやって、すぐに壮馬くんに私を突き出そうとするんですから」

「見て、いらんないんだよ」

「それは、友達として? それとも裁縫部として? 同中の馴染みとして?」

「……たぶん、人として」

「高尚だね。ユウちゃんは将来、そうやってたくさんの人を助けていきたいんだね。無理に、決まってるのに」

先人からの忠告とは言わない。けれど、彼女のしようとしている道の先に、私が踏んでしまった地雷が埋まっているのは、確実だ。必ずいつか、どこかで、踏むことになる。
だからこれは、ユウちゃんのために言うこと。

「ねえ、私に関わるのはもうよしなよ。……関わってもいいけど、私の、そのことは、忘れて。そしてユウちゃん自身も、私以外のどんな人にも、どんな人のそういうことにも、もう関わらないほうがいいよ。それが、人としての、答えなんだよ」

「あんまり、ふざけたことばっかり抜かしてるんじゃないぞ」

声がして、私はおそらく、肩を竦めたと思う。自分で自分の行動を『と思う』もないけれど、私にとって彼の声は、現実と非現実の入り口なんだ。
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