テディベアは裏切らない




中崎壮馬を自分から探すのは、一ノ瀬レナちゃんのことで彼を頼って以来だった。壮馬くんのクラスは、二組。隣だ。けれど、休み時間、彼は教室にはいない。いつも、校内を歩き回っている。そうやってさまざまな人をその真っ黒い瞳に映し、ひとりでも多くの人の心情を汲み取ろうとする。

結局、私が彼を見つけたのは、放課後だった。つまるところ、彼が必ず部室にいる時間に、しかるべき場所で見つけた。探し出したというよりも、一日かけずり回ってしまいには時間に解決されてしまった。

部室は、相変わらず多種多様なテディベア達が行儀よく座っている。大して広くもない室内。正面の窓を避けたすべての壁は棚に埋め尽くされ、ところ狭しとテディベアが並んでいた。蝶ネクタイをつけたベアに、和服のベア、リボンを頭に乗せたベアに、仲良く手を繋いでいるベア。そんな中に紛れている、箱の中でペルソナをつけているベアと、包帯を巻かれたベアは、レナちゃんとまひるちゃんに準えられたものだ。
そして、この部室の長である壮馬くんは、いつもの独特の雰囲気をまといつつ、中央のテーブルに裁縫道具を広げていた。

その余裕の姿勢に、どこか、負けた気さえする。だって、彼やユウちゃんは、人の居場所を察することができる。超能力ではないけれど、だれがどのように考えて、どこへ向かうのか……その心情を察することができる。私には、できない。もし、人の心の一部でも汲み取ることができるなら……中学のあの夏……私は、あの過ちを犯さずにすんだはずだから。だから、二人の感性が、悔しいくらい羨ましかった。
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