テディベアは裏切らない
もう、二度と顔を合わせるつもりはなかったらしい壮馬くんは、私がやって来てもどこ吹く風。また新しいベアに命を与えていた。今は、ギンガムチェックの生地を使った、手乗りサイズ。それにまた、どんな意味があるのか、私にはわからない。
私はあえて、彼が針と糸を操るのを、眺めていた。
「なんの用だ」
と、部室にやって来ていながら一言も発しない私に痺れを切らして、壮馬くんが口を開く。私と同じ空間にいると彼は緊張するらしいことを、実はずいぶん前から知っていた。腫れ物を触れるような空気が、今も、壮馬くんから流れてきていた。
それなのに、なんの用だとはよく言ったもの。
ユウちゃんの姿は見えなかったけれど、都合いい。彼と一対一で話ができる。
私は彼に向かって、その腫れ物をずいと見せつけた。
「このテディベア、なんですか」
彼は、こちらを見もしない。質問はしたものの、手は相変わらずベアに愛情を注いでいた。やがて、溜め息のようなものを漏らす。
「……未完成品だ」
「うそ」
ただの未完成品が、私に似ているはずがない。私に似ているならば、未完成品であるはずがない。これは、こういう形をした、完成品なんだ。中崎壮馬の、なにかしらの意志を内包した、紛れもない使者なんだ。
私にはわからないメッセージを、「なんの意味もない」と嘘ののしをつけて渡されるなんて、耐えられないこの真っ白いテディベアが彼の敗北宣言以外の意味を持っていたなら、最初から素直に受け取りもしなかったのに。
私はあえて、彼が針と糸を操るのを、眺めていた。
「なんの用だ」
と、部室にやって来ていながら一言も発しない私に痺れを切らして、壮馬くんが口を開く。私と同じ空間にいると彼は緊張するらしいことを、実はずいぶん前から知っていた。腫れ物を触れるような空気が、今も、壮馬くんから流れてきていた。
それなのに、なんの用だとはよく言ったもの。
ユウちゃんの姿は見えなかったけれど、都合いい。彼と一対一で話ができる。
私は彼に向かって、その腫れ物をずいと見せつけた。
「このテディベア、なんですか」
彼は、こちらを見もしない。質問はしたものの、手は相変わらずベアに愛情を注いでいた。やがて、溜め息のようなものを漏らす。
「……未完成品だ」
「うそ」
ただの未完成品が、私に似ているはずがない。私に似ているならば、未完成品であるはずがない。これは、こういう形をした、完成品なんだ。中崎壮馬の、なにかしらの意志を内包した、紛れもない使者なんだ。
私にはわからないメッセージを、「なんの意味もない」と嘘ののしをつけて渡されるなんて、耐えられないこの真っ白いテディベアが彼の敗北宣言以外の意味を持っていたなら、最初から素直に受け取りもしなかったのに。