テディベアは裏切らない
「俺は、さっきから、本当のことしか言ってない。それは、未完成だ」

「だけどお母さんが、私に似てるって言ったんですよ」

「だから、未完成なんだ」

「……どういう、ことですか」

「そのままの意味だ」

一度視線を伏せてから立ち上がった彼は、私から子供を受け取るように優しく、テディベアを取り上げた。そこが、おそらくどのテディベア達にとっても一番居心地がいいんだろう。真っ白く、顔のないテディベアは壮馬くんの小脇に抱えらて、安らいでいるようだった。

「コイツは、お前だよ……」

「……未完成、なのにですか」

「未完成だからだ」

意味がわからないのではなく、カチンと来た。

彼はテディベアに意味を持たせる。その意味は、必ず、対象となる人を準えたもの。つまり、彼が私に準えた意味は――

「私が、未完成って話ですか」

もっともそれは、当然のことだった。私は未だに、彼女への贖罪を見つけられない。小説も書き上がらない。たぶん一生、この坩堝から抜け出すことはできない。私は、未完成なんだ。十字架を背負ったまま。

それを、こうして真っ白い形にされたのが、不快だった。私は未完成であれ、絶対に、こんな純白ではないのだから。

むしろ、あそこに並んでいる包帯ぐるぐるのベアのほうが、ふさわしいのに。
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