テディベアは裏切らない
「私とそのテディベアは、似てません。私でもありません」

「いつまで、そうやって肩肘張ってるんだ」

「はい?」

「どうしてそんなに怒ってるんだ」

「え?」

「どうしてそこまで、維持になってるんだ!!」

「っ」

正面から怒鳴り返されて、今度はびくりとした。彼のそんなに大きな声を、初めて聞いた。沈痛の面持ちで、テディベアと一緒に私を見据えてくる。

どう、返していいかわからなかった。けれど、弾かれるように自覚する。
逃げなければ。

「か……帰りますね。もう、私に関わらないでくださいよ」

この空間にこれ以上いるのは、危険だ。きっと絆されてしまう。中崎壮馬の言葉に絡め取られて、私は自分の心を吐露してしまう。だれにも解決できない、私が背負わなければならない十字架を。

彼は、私の過去を知っている。私の十字架の重さも。だから、今さらそれを聞いたところで、彼が私を見る目は変わらない。けれど、今その十字架に触れられたら、私の心が丸裸にされてしまう予感がした。

「待て」

「待ちません」

「待てよ」

二度目の呼びかけと同時に、肩を掴まれ、強引に振り向かせられる。そして胸に押しつけられたのは、白い、テディベア。

押し返すこともできないほど強い強い力だった。けれど私は、それを持ちたくなかった。私に似ている、けれど、真っ白いテディベアなんて。
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