テディベアは裏切らない
彼は、腕を一直線に伸ばしてテディベアを押しつけているのに、視線だけは俯けて、私を見ようとしなかった。

「俺は、お前の傷の縫合を諦めた。けど……せめてコイツだけでも、そばに置いてくれ」

「どうしてですか」

「それは」

「思惑があるなら、白状してください」

間髪入れない私のストレートに、彼はグッと喉を詰まらせたけれど……

「コイツが……、俺の代わりにお前を癒してくれたら、と思うからだ」

バカらしいと、はねのけることができなかった。もしはねのけられたなら、私はむしろ、こんなテディベアの存在に心乱されたりしない。

テディベアの意味は、わからない。わからないからこそ、いつか、なにかの拍子に理解してしまったら……その時、私は中崎壮馬の術中にはまってしまう。

私から、十字架が取り上げられてしまう。たとえ、彼女への贖罪を見つけられていなくても。

「要りません。……私に、救済なんて」

「だが、お前は救済を探してる。……お前が傷つけた、だれかのために」

「当然です」

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