テディベアは裏切らない
「小百合。……未完成なんだ」

「テディベアですか」

「違う」

「私がですか」

「違う。……みんなだ」

みんな……。

その単語に、まさかと思った。裁縫部の根回しは、私もよく知っている。まさか、私がここを訪れるのを察して、外にはユウちゃん、レナちゃんや、ほたるちゃんが控えているのでは。

ベアを受け取らないまま振り返り、部室のドアを開ける。勢いよく顔を出した長屋の外には――予想に反し、だれもいなかった。
まさかとは思ったものの、そうだ、これで部室の外にみんながひそんでいたら、いっそおかしい。

「はは、は……」

「小百合」

振り返って、私はもう一度、声に出して笑った。なにかが、おかしくて。

「ははは……ねえ、壮馬くん。私は今、この部室の外にみんなが隠れているんじゃないかって思ったんですよ。みんなで、寄って集って私の力になろうとか、そんな計画を立ててるんじゃないかって。でも、はずれちゃいましたね」

「……ちょっと、来い」

「え?」

「いいから来い!」

テディベアを受け取らなかったのが悪かったのか、それとも笑ってしまったのがいけなかったのか、壮馬くんは突然私の手を取り、歩き始めた。部室から出て、校舎へと。
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