テディベアは裏切らない
言葉は、最後まで続かなかった。ほたるちゃんがもう一発、手加減抜きでレナちゃんをひっぱたいたのだ。

倒れるレナちゃんが、カッターを落とす。廊下をからから転がる。

それをすばやく拾ったほたるちゃんは、

「こんなもん」

ゴミ箱へ投げ込んだ。

レナちゃんがハッと振り返ったと同時に、覆い被さるようにほたるちゃんが抱き締める。

「――あんま、バカなことし過ぎなんだよ、レナは」

一気に起こった出来事に、レナちゃんが目を白黒させているのが、離れたここからでもわかった。

「ほたる……?」

(ほたるちゃん……)

レナちゃんが訝しがるのと一緒に、私も小首を傾げていた。ほたるちゃんの声が、湿っている。レナちゃんを抱き締めているというよりもむしろ、縋りついているみたいだった。

「バカレナ……。あたしゃ、アンタが傷ついたらどんなことだって悲しいんだよ。ちょっとのことで心配になんだよ……。飄々となんかしてらんないんだよ」

「……」

「友達だろ、あたしら。そんなまどろっこしいことなくても心配するし、力になるし、……バカなことしたら、ひっぱたいてやるよ」

「……うん」

「そんぐらいしか……っていうかそれ以外にどう心配してやればいいのかも、わかんないけどさ。友達、なんだから、そんぐらいだけでも、させてよ」

「うん……ありがと、ほたる」

レナちゃんが、ほたるちゃんの背中に腕を回す。どちらがどちらを抱き締めているのか、私からはわからなくなった。
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