テディベアは裏切らない
なんにせよ、いることがばれているなら、隠れる必要もないと思って、出て行く。さっきの二人のように、廊下で対面する形になった。

思えばそれは、小学校以来の対面で……懐かしさよりもただ、小石ほどの大きさしかないものの、緊張を覚えた。

彼女は、『自然に見える笑顔』ではなく、本心からの笑顔で私の前にいた。

けれど、緊張しているのはむしろ彼女なのかもしれない。私を見つめる瞳が、「ついに逢えた」と感動しているのが窺えた。

「あのひょっとして、ずぅっと隠れてたんですか?」

受け答えの最初に、皮肉のような言葉が衝いて出た。

「そっちこそ、ずっと教室にいたんですね。外でレナちゃんとほたるちゃんがいろいろ言い合ってる時に」

「だって、あれは二人の問題ですもん。私がでしゃばったらダメでしょ?」

「そうですね」

あのタイミングで、高村まひるがレナちゃんとほたるちゃんの問題に介入しても、意味がない。

彼女は彼女で、考えていたんだ。いやきっと、二人の話が決着するまで、だれも通りかからないでほしいと祈ってさえいたかもしれない。

けれど、それとこれは話が違う。

「お願いできるなら、アナタにも、私の問題にでしゃばらないでほしいんですけどね?」

言葉の裏にたっぷりと、ユウちゃんから聞いたことを忘れて、私に関わるのをやめてほしいと塗りたくった。

高村まひるは、笑った。

ユウちゃのように『できた』風でもなく、彼女自身が自負する『人を笑顔にする笑み』でもなく、少し、悲しそうに。
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