テディベアは裏切らない
「牧田さん……あの、小学校の時みたく、小百合ちゃんって呼んでいい?」

「どうぞ」

私も、まひるちゃんと呼ぼうと、勝手に決めた。

「あのね小百合ちゃん……私、アナタに言われたこと、ずっと忘れなかった」

「……でしょうね」

だからアナタは歪んでしまったのだし、その歪みを見つけたおかげで私も、十字架を背負い続ける覚悟ができたのだから。

「でも、ずっと忘れられなかったし、絶対忘れたくなかったけど、そのあいだ一度も、小百合ちゃんを憎んだことはなかったよ」

「……そうですか」

うそだ。絶対に嘘だ。極端な話、私は彼女の人生までも変えたんだ。私の一言が、どれだけ彼女の心を抉ったか……私じゃ、わからない。わからなかったから、抉ってしまったんだ。

それなのに、彼女は私に微笑む。今度は、『人を笑顔にする笑み』で。

「うん。だから今なら胸を張って言えるの。小百合ちゃんに逢えてよかった。ありがとう」

無邪気な子供に、包丁で突き殺されるような傷みが、私を襲った。

私のなにも知らず、私の過去を勝手に『良かったこと』に改竄して、私さえも美化している彼女の言葉が、胸に突き刺さる。それはあたたかくもなければ冷たくもなく、ただ鋭利に、無機質に、抜けば血が吹き出るくらい深く、刺さった。
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