テディベアは裏切らない
「なんで、私が――あの時の私が、ここに……っていうか、アンタ……」

もう、だれなのか、わかっていた。直視することができなくて、私は斜め下を向きながら挨拶する。

「久しぶり。……元気だった?」

私が殺しておきながら、そんな質問ないだろうと思ったけれど……彼女は、とても悲痛な面持ちでゆっくり、頷いた。そして、質問への答えじゃなく、私の頬を、そっと撫でる。懐かしいものを、愛でるみたいに。

「小百合だよね……」

「はは……。でなかったら、だれに見えるんです?」

「だって、この髪とか……」

「ふふ、どうですか? できるだけ似せたんですよ、いろいろ。整形とかは無理ですけど、真似できるところは全部」

私が殺してしまった、アナタに。白いヘアピンも、時々敬語が混ざる口調も、巻きを作らない黒髪も。小説家の夢も。私よりもずっと本が好きだったところも。全部、私が殺したアナタを保管しておく場所として。

今は茶髪で、髪を緩く巻いて、ミニスカートがかわいい今時の女子高生になってしまったアナタが、アナタの取り戻そうとしていたアナタを、いつでも思い出せるように。
出来る限り面影を残そうと思った。

夏――それは、私が彼女を殺した季節。そしてついでに、私が死んだ季節。

「ごめん……」

彼女は少しずつ俯き、私の肩に両手をそれぞれ乗せた。けれど、どんどん俯いていく彼女の手は、肩から腕、腕から手首へと落ちて、彼女自身も、私の前に蹲ってしまう。
< 76 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop