テディベアは裏切らない
私は自分の言葉がどれだけの人にどれだけの影響を与えたのか、すべてを覚えているわけじゃない。そんなのは、当然だ。

でも、できるなら、すべてを知りたい。思い出したい。そうしないといけない気がする。

たとえば、駅のホームで人にぶつかったとする。その人に「すみません」の一言もなしに、そのまま行ってしまったとする。ぶつかられた人は、イヤな気持ちになる。

それが原因でもし、その人が少しずつ他人との関わり合いを諦めてしまったら？　世の中には、「すみません」の一言も言えない人間ばかりなんだと思ってしまったら？

その一瞬が、取り返しのつかないことになる。

彼は、「そこまで悩めば、それでいいんだ」と言った。

彼女は、「さゆりんの気にすることじゃないよ」と言った。

だけれど、無理だ、そんなの。私は気になって、気になって、気になって仕方がない。だって、同じことが、過去にあったから。

私の一言が、私の行動が、だれかの考えを、表情を、生活を、一変させてしまった。

何度も。

すべてに理由がある。

高村まひるの貼りついた笑みにも。
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