空の姫と海の王子


「だからあの女は俺に構ってほしくて……馬鹿かあの女は!!」


馬鹿はお前だ、と誰か言ってくれ

そんな誰かの心の声も虚しく
通りは静まり返ったままだった

頭を抱えて悩んでいた陸は立ち上がり
来た道を戻りはじめる


あの女の態度の理由が分かったなら
男として大きな心で受け入れるべきだ!


「──私、あなたが好きなの」

「すまねえ。俺はお前をそういう目で見れない」

「それでもいいの!私があなたを諦められるまで……好きでいさせて」

「お前……そんなに俺の事を」

「好きなの!日本一、世界一、地球一……いいえ、銀河系一好きなの!!」

「……っ、お前……」


脳内でマイワールドを展開して
鼻の下を伸ばす変態の前に
ひらり、と何かが落ちた

妄想を止めて地面に落ちたそれを見て
思わず顔をしかめた

季節外れな桜の花びらを拾うと
またひらりと落ちてきた


「………は?」


桜の花びらを追って空を見上げる

小さなビルの屋上から
少女が陸を見下していた

悲しそうな、辛そうな

その空色の瞳を見て
陸の中の何かが強く反応した


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