空の姫と海の王子


───路地裏の奥の奥の奥

¨Free Style¨と書かれた板が
ぶら下がる扉の前で足を止めた

周りに人の気配がしない事を確認して
玲は扉に手をかけ、ゆっくりと開けた

カラン、カランと鈴が鳴って
カウンターに立つマスターが微笑んだ


「おや、お帰りなさい」

「ただいまマスター!!」

「ちゃーんと連れてきたよ!!」


玲と蘭が笑顔で入って来ると
後ろから控えめに顔を出したのは


「お帰りなさい。お久しぶりですねひかりさん」

「………た、ただいまー……」

「この寒さの中では歩き疲れたでしょう。ひかりさんは紅茶でしたよね」

「うん………」


マスターに苦笑いすると
ひかりは中に入ろうとする

しかし、後ろに立つ男は
一緒に中に入ろうとしない

海斗は静かに空を睨んでいた


「何やってんだよ、早く入るよ」

「ん、……先入ってろ」

「敵なんていないって。ほら早く」


手を引っ張って無理矢理店に入れると
ひかりはバタン、と扉を閉めた

海斗は溜め息をついて
ひかりに続いてカウンターに座った


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