空の姫と海の王子


マスターは何も言わずに
微笑みながら飲み物を渡す

玲と蘭にはココアを
ひかりには紅茶を
海斗にはコーヒーを

飲み物で冷えた体を暖めて
楽しそうに話す三人とは違い
海斗は不機嫌そうに窓の外を睨んだ


分厚い雲が徐々に晴れて
月が、星が姿を現した

なんてことない光景
しかし海斗は空から目が離せなかった


「この店には小さいですがベランダがありますよ。寒いのでコーヒーを持っていくといいでしょう」

「………お前」

「今夜は月が綺麗ですからね」


海斗にしか聴こえない程の声で
マスターは小さく囁いた

ひかり達はお喋りに夢中だ

海斗はチラリとマスターを見た後
黙って階段を上がっていった


「………海斗?」

「お疲れの様子でしたので寝室に案内したのですよ」

「ふーん、由紀達に紹介しようと思ってたのに」


ま、明日でいっか


ひかりは階段から目を離して
また玲と蘭の話に耳を傾けた


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