学び人夏週間



昼休み。

ーーガシャン!

食堂にひときわ大きな音が響いた。

みんなの視線が一斉に音の方へと向く。

重森が飯島の胸ぐらを掴んでいる。

二人を止めようとする周囲の焦った声。

重森と飯島が何かを言い合っているが、何を言っているかよく聞き取れない。

食堂内が騒然として、急にご飯が美味しくなくなった。

この二人の因縁といえば、私には松野しか思い浮かばない。

止めなければ。

私が立ち上がると、この状況でのんびり微笑む南先生が口を開いた。

「やらせてあげましょう」

「え?」

やらせるって、どうして。

ケガをしたりしたらどうするの。

「大丈夫ですよ。なにも殺し合うわけではないのですから。田中先生」

南先生に呼ばれ、田中先生がこくりと頷き立ち上がる。

どうやらこういうことには慣れているようだ。

俊輔と小谷先生も、冷静な様子で「頼みます」とでも言うように彼へ目配せする。

私だけが慌てていて、情けない気分になる。

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