学び人夏週間

「重森も読むんでしょ?」

「まあ、読みたい」

ムスッとしたままそう言って、私の差し出した本を受け取った。

松野に冷たくあしらわれて拗ねてしまったらしい。

ぶっきらぼうな顔で本をパラパラめくり、

「文字ばっか」

と呟く。

重森は松野よりも読み終わるのに時間がかかりそうだ。

「はい、じゃあ今日は三日目の課題ね」

二人は素直に課題に取り掛かる。

いろいろ諦めがついたのか、初日がまるで嘘のように集中している。

重森でさえ真面目な顔だ。

「あ」

数分後、急に松野が声を出したものだから、私も重森も少し驚いて松野を見た。

松野はバッグをガサガサ漁って、二つ折りにしてある紙を取り出した。

「これ、感想文です」

「もう書いたの?」

「はい。早く書かないと、内容忘れちゃいそうだったので」

受け取って、開いてみる。

学校の指定通り、原稿用紙四枚に「とても切なくなりました」や「勉強になりました」などと感想が書かれていた。

まだパッと見ただけだが、苦手だと言っていたわりに、まとまった文が書けている。

「うん。添削して返すね」

「お願いします」

松野は再び三日目の課題に取りかかった。

そこに、重森が懲りずにちょっかいを出す。

「ちょっと、さやか先輩。俺まで感想文書かなきゃいけなくなるみたいじゃないですか」

松野は彼の顔も見ず、慣れたように素っ気なく告げる。

「書けば?」

< 50 / 200 >

この作品をシェア

pagetop