学び人夏週間
「重森も読むんでしょ?」
「まあ、読みたい」
ムスッとしたままそう言って、私の差し出した本を受け取った。
松野に冷たくあしらわれて拗ねてしまったらしい。
ぶっきらぼうな顔で本をパラパラめくり、
「文字ばっか」
と呟く。
重森は松野よりも読み終わるのに時間がかかりそうだ。
「はい、じゃあ今日は三日目の課題ね」
二人は素直に課題に取り掛かる。
いろいろ諦めがついたのか、初日がまるで嘘のように集中している。
重森でさえ真面目な顔だ。
「あ」
数分後、急に松野が声を出したものだから、私も重森も少し驚いて松野を見た。
松野はバッグをガサガサ漁って、二つ折りにしてある紙を取り出した。
「これ、感想文です」
「もう書いたの?」
「はい。早く書かないと、内容忘れちゃいそうだったので」
受け取って、開いてみる。
学校の指定通り、原稿用紙四枚に「とても切なくなりました」や「勉強になりました」などと感想が書かれていた。
まだパッと見ただけだが、苦手だと言っていたわりに、まとまった文が書けている。
「うん。添削して返すね」
「お願いします」
松野は再び三日目の課題に取りかかった。
そこに、重森が懲りずにちょっかいを出す。
「ちょっと、さやか先輩。俺まで感想文書かなきゃいけなくなるみたいじゃないですか」
松野は彼の顔も見ず、慣れたように素っ気なく告げる。
「書けば?」