学び人夏週間
あまりの構ってもらえなさに、おかしくて私は「ぷっ」と吹き出してしまった。
それを見た重森はムキになる。
「俺、原稿用紙とか持ってきてないし!」
すると松野は涼しい顔でバッグからビニールに包まれたままの原稿用紙を取り出し、開封して数枚重森に差し出した。
「あげる。たくさん余ってるし」
重森は膨れっ面でその用紙を受け取る。
表情とは裏腹に、少し嬉しそうに見えるのは気のせいか。
「ありがと……」
「無駄にしないでよね」
松野の言いつけに、重森はフンと鼻を鳴らす。
「しないし」
やはり、重森は松野には敵わないようだ。
同じ15歳なのに、まるで姉と弟のようだ。
これが中学生と高校生の差?
それとも男女の成長期のタイムラグ?
「足りなかったらまたもらっていい?」
「余ってればね」
松野の方に身を乗り出すように話しかける重森。
そして顔すら重森の方を向かない松野。
小さな弟が姉に構って構ってとすがりついているよう。
「あんたたち、ほんといいコンビだね」
私がそう言うと、二人が不機嫌な顔で私を見た。
重森は黙り、私の貸した本の下に松野の原稿用紙を置いて今日の課題を再開。
松野もチラリと彼を見て、涼しい顔で課題に向かった。
この日の夕食時。
生徒たちは風呂上りの石鹸の香りをまとい、色めき立っていた。
これから肝試しのパートナーが決まるのだ。
「全員くじ引いたかー?」
「はーい!」
俊輔の問いかけに、生徒から元気のいい返事が返ってきた。
この肝試しは、全体的に俊輔が仕切るらしい。
「えー、残念なお知らせですが、今年の肝試しは男子が一人余ります」
「え~。マジかー」
「俺だったらどうしよう」
男子の低い声が食堂にどよめく。