学び人夏週間

俊輔がちゃんと着用したのを見届け、私は松野を探すために玄関へ向かう。

「彩子、ちょっと待って」

俊輔に呼び止められ、すぐにでも外を探したい私は、もどかしい気持ちで振り向いた。

「何?」

松野が遠くへ行く前に、早く見つけたいんだけど。

「携帯、持ってるか?」

「ううん。持ってた方がいいかな」

彼は真面目な顔でうなずく。

「松野がいたら、すぐに連絡して」

「わかった」

階段を駆け上がり、3階の部屋へ。

充電器を挿したままの携帯を掴む。

壊れたら困るから、あまり濡らしたくない。

雨がっぱのボタン付きポケットにしまおうとしたところで携帯が震えた。

届いたメッセージをチェック。

俊輔からだ。

<風が強いから、彩子が飛ばされないか心配。何かあったらすぐに連絡すること!>

思わずクスッと笑いが漏れた。

「そんなに簡単に飛ばされないよ」

つぶやくと張り詰めた気持ちが少しだけ緩む。

<了解。俊輔もね>

送信完了の表示を見届けて、部屋を飛び出した。

念のために事務室で懐中電灯を借り、玄関へ。

風の圧力で扉がとても重い。

私が外へ出ると、手を添えていたのに、扉がものすごい勢いで閉まった。

雨と風の音しかしない。

そこにププッとクラクションの音。

視線を音の方へ向けると、ゆっくり車を走らせる俊輔が手を振っている。

私が手を振り返すと、施設の外へ向かってスピードを上げた。

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