学び人夏週間

「すみません、雨がっぱ貸していただけませんか?」

1階の用務員室で外の捜索の準備。

スタッフにそう頼んでいると、俊輔も階段を降りてきた。

「彩子、外は台風だぞ」

彼が私を心配してくれていることはわかる。

でも。

「松野は外に出た可能性が高いんだよ? 早く見つけなきゃ」

用務員のおじさんは俊輔に気づいて、雨がっぱをふたつ貸してくれた。

「ちょっとホコリ臭いけど、これでいいかい?」

「十分です! ありがとうございます」

ひとつ俊輔に手渡し、もうひとつを速やかに身につける。

おじさんの言った通り、雨がっぱは少しホコリ臭かった。

「私は施設内を探してみる。俊輔は車で山を下ってみて」

「わかった」

生徒と南先生は、塾で手配したバスで合宿場へ来た。

そして田中先生と我々学生講師は、田中先生の車に乗り、俊輔の運転で来た。

松野は昨夜、帰りたいと言ってた。

もう少し深く話を聞いていたら、思い止まってくれたのだろうか。

なんて、後悔先に立たず。

この天気でそんな無謀なことをするようなバカではないと思うけれど、山を下りている可能性はゼロではない。

私の剣幕に、俊輔が唖然としている。

一刻を争うのにモタモタする彼に腹が立ち、彼の手から雨がっぱを奪い、広げる。

「ほら、着て」

「ああ、うん」

少し乱暴に彼の腕を通した。

ホコリ臭くてもこれがあったことに感謝する。

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