月夜にヒトリゴト

通帳

家計を握っていた旦那は、それだけでなく、色んなものを管理したがった。
私の携帯を覗くなんて当たり前。
バックの中味も、細かくチェック。
財布を覗いては、レシートで買い物に行った時間、場所、何を買ったか細かくチェックした。
冷蔵庫の中身も、洋服ダンスの中も、押入れの中も、毎日チェックしてたんだと思う。

旦那にとっては、私も彼の管理下にある、彼の所有物でしかないのだと、思い知らされた。

家にあるものは、すべて自分のものでないときがすまない人だった。
家財道具も、結婚して持ち込んだものですら、“結納金”を渡したんだから、「俺のものだ」という人だった。
結婚してからかったものは、服でも靴でも化粧品でも、何もかも「俺のおかげで買ったもの」と教え込まれた。
勿論、必要なものは、許しをこうて買ってもらうしかなかった。
美容院も、ご近所や園ママとのお付き合いの食事会にも、ボーナスが出たときくらいしか、許しが出ないのは当たり前だった。

そのうち、何事も“諦める”のが当たり前になり、最初から望まない、執着しないのが癖になってしまった私。
思い起こせば、小さな頃からそうだったかもしれない。

リカチャン人形だって、シリーズ物の絵本だって、欲しいものは、決して買ってもらえるものではなかった。
口にすらしてはいけないものだった。
我慢するというよりも、禁句に近かった。

結婚してからも、何もかわらないのだと・・・
私はそういう運命なのだと、知らしめられた。

そんな中、運命の日は来た。
バイトに行っていた。
旦那はいつものように、私の箪笥の中を棚探ししたようだ。
奥深くに押し込んでいた、子ども名義の通帳を見つけた。
お祝い金や、お年玉をずっと溜めていた通帳を、借金の返済に借りてしまっていた。
勿論、返すつもりだったので、「○○日○○のため借りる」とちゃんと記載していた。

それでも、旦那にとっては衝撃だったろう。
何にお金を使ってるのか?
子供のお金に手を出すって信じられなかったろう。
旦那の衝撃の大きさは、私にも分かる。

帰るなり、玄関先で殴られた。
家に入れてもらえなかった。
もう、私は、このまま子ども達に会えないのかもしれないと、本気で思った。
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