月夜にヒトリゴト
再会
「同窓会の案内状」が届いたのは、年末の出来事だった。
秋めき始めた頃に、幼馴染の中で最後の独身者さっちゃんが結婚した。
おめでたい席で、「そろそろ同窓会でもしたいね~」と口火を切ったのは私だった。
さっちゃんづてで、幹事を務めてくれるようになったのが、彼、山村圭亮だった。

「藍子さん、お元気ですか?
 さつきから、同窓会をご希望と聞き、
 連絡しています。
 年末の帰省はいつ頃になりそうですか?」

なんともそっけない、期待はずれのメールだった。
後で聞く事になるが、これでも、何度も何度も書き直した末のメールだったらしい。

さっちゃん情報によると、圭亮は、一旦就職はしたものの、猛勉強の末、弁護士の資格を取り、地元に戻って事務所を開いているらしかった。
なんとも、一途で頑張り屋な彼らしかった。

私はというと、結婚して、16年の年月がたった、普通の主婦だった。
小学生二人と幼稚園に通う末っ子の三姉妹の母親で、なんだか毎日バタバタと過ごす代わり映えの無い生活をしていた。

もうずっとあっていない幼馴染。
指折り数えてみると、軽く20年近くはたっていた。
大人になった圭亮なんて、想像も出来なかった。
きっと、彼も、おばちゃんになったわたしを想像できなかったろうと思う。

同窓会に向け数回メールのやり取りを繰り返したものの、なんとも複雑な心境のまま迎えた再会だった。

彼は、私の初恋の相手だった。
勿論、そんなこと誰にも言った事はないが、圭亮の方はというと、当時「憧れの藍子さん」というフレーズが、公然の事実として、誰もが知ってる”秘密”と化していた。

そんな状況では、何かにつけて、冷やかされ、注目され、当の本人達は、全くもって、話すことは勿論、目をあわすこともなかったのが現実。
毎日、ドキドキソワソワした日々だった。
もう、すっかり遠い記憶となってるけど・・・

そんな喋ることもほとんどなかった圭亮と、普通にメールを交わすようになり、久しぶりに再会した夜。
まさか、何かが始まるとは、お互いに想像もしていなかった。
そんな、普通の再会だった。

< 2 / 44 >

この作品をシェア

pagetop