月夜にヒトリゴト
転入生
圭亮は転入生だった。
たぶん、一年の途中から入ってきたんだと思う。
そのくらいの記憶しかないとこを見ると、決して一目ぼれではなかったんだと思う。

ど田舎の小さな町だったので、幼稚園から小学校、そして中学校と隣りあわせで建っていて、一クラスしかないくらいの少人数で、勿論、そのまま持ち上がりクラスという環境。
そう、幼稚園から一緒の幼馴染は、中学を卒業するまで、11年間一緒だったことになる。
そんな環境からか、男女関係なく、学年も関係なく、皆が仲の良かった幼き日々。
たくさんの思い出が、同窓会という不思議な空間で蘇った。

受け持ってもらった先生、なんでもない小さな出来事。
授業中は勿論、登下校での出来事、部活だってそう・・・
あげれば切りのない思い出が、あふれ出てきた。

圭亮は、途中転入生とは言えないくらい、クラスの要な人物だったんだと、話をしていて、改めて感じた。
でも決して、目立つタイプでもなく、もてる方でもなかった。
いかにも、“普通”なとこが、圭亮のよさだったんじゃないかと思える。

圭亮曰く、私は、“才色兼備”らしかった。
勿論、彼にだけそう映ってたに違いないけど・・・
確かに、ある程度がソツなくこなせて、なんでもなく暮らせていたので、そう見えていても不思議ではない。
本当は、欠点だらけで、全く自分に自信のない普通の女の子だったんだけど・・・

そう、あまりにも、お互いの事を表面でしか捕らえてなくて、全く知らないことばかりであったと、今さらながら感じる。
それは、仕方のないこと。
本当に、直接話すなんて、ほとんどなかったのだから・・・
まして、お互いに、胸のうちに抱える悩みを見せるわけもなく、知らないまま、20年の月日がたってしまっていた。

あの時、もし、お互いの家庭環境を知っていたら・・・
少しでも、気持ちを分ち合えていたら・・・
何かが変わっていただろうか?

いや・・・
そんなことはあるまい。
“今”だから話せる事だって、きっとあるはず。
過去になりつつあるから、口にできることも、世の中にはたくさんある。
そういうことも含めて、互いにいい大人になってきたんだと思う。
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