月夜にヒトリゴト

離婚

その後のやり取りで、圭亮に、うちの夫婦は、もう取り返しのつかない関係になってることは、打ち明けていた。
借金のことも、暴力のことも、浮気のことも・・・
話すたびに、「よりによって、大切な君がそんな目に合ってるなんて」と涙を流してくれた。
圭亮は、「地元に帰っておいで」「俺の事務所で働けばいい」そう繰り返してくれるようになっていた。

私も、いよいよ、本気で離婚に踏み出すときが来たと思っていた。

その前に、私は圭亮にもう一つ打ち明けないといけなかった。
それは、とても大切なことだった。

借金返済を、一人で抱え込み、ひっそりと返済を続けるにも限度のあった私。
ますます膨らんでいく一報の借金に旦那が気付いてしまった。

そのとき、旦那は、義母と一緒に弁護士に相談に行っていた。
勝手に“自己破産”の手続きを始めていたのだった。

私はちょうど、末っ子を妊娠していた。
夏風邪を引いていて、薬も飲めずに寝込んでいたときだった。
そんな体調の悪い私に「通帳を出せ」「書類を書け」「経緯を話せ」何度も迫ってきた。
長く寝込んで、やせ細る私は、手続きと同時に、裁判所に連れて行かれた。

あまりの仕打ちに、もう、この人たちとやっていくのは限界であると、諦めにも似た感情が生まれた。
もう限界だった。

破産の手続きが終った日、旦那に離婚を切り出した。

そのとき、旦那に包丁を突きつけられた。
よりによって、少しふくらみを帯びたお腹に向かって・・・
このままでは、本当に危険だと思った。
逃げなきゃ・・・
真剣に考えていた。
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