月夜にヒトリゴト

家出

その頃、旦那はちょうど、移動になった。
隣の県とはいえ、離れ小島のその地に、旦那は一ヶ月ほど先に行き、その一ヵ月後に住宅を引越すこととなった。
私たちは、その間、引越しの準備をしないといけなかった。
結婚して、10年、地元にある住宅に住んでいた。
あらゆる荷物を整理しながら、「今しかない」そう思った。
「逃げるなら今だ」日に日にますその感情。

親に相談したのはそのときが初めてだった。
暴力を振るわれてること。
何もかも旦那の支配下にあること。
破産したことも、妊娠してることも、そのとき初めて打ち明けた。
親は泣きながら謝ってきた。
初めて「帰ってきていいよ」そういってくれた。

勿論、親元に帰るつもりはなかった。
旦那に連れ戻されるし、殴られるし、なによりも、子ども達から引き離されてしまう。

ひとまず、荷物を従兄弟の家に運び出した。
一室を埋め尽くすような荷物を、毎週帰ってくる旦那に気付かれないように、コツコツと運び出した。
ひっそりと、事は進んで行った。

旦那は、引越しの前日帰ってくる手はずだった。
私はその日にあわせ、ウィークリーマンションを借りていて、役所に離婚届をもらいに行き、転居手続きを済ませ、旦那の荷物と、離婚届けを置いて家を出た。

そこまでするのに、何年我慢し続けただろう。
もう心も体もボロボロだった。

その夜、帰宅した旦那から、電話が鳴りっぱなしだった。

< 23 / 44 >

この作品をシェア

pagetop