月夜にヒトリゴト

それから何度も電話が入り、実家にもずっと見張りがついた。
旦那の両親も謝罪に訪れたという。
あくまで体裁を気にする旦那や義父母。
「引越しだけは、何事もなかったように済ませてくれ」という。
その後、ちゃんと話し合いを進めようと訴えかける。

実際、冷静に考えてみると、私は、園児二人をつれ、今から子どもを産もうとしてる。
周囲は誰一人として、子どもを産むことに、賛成してくれる人はいなかった。
おろして、母子三人で出直せという。

ごもっともな意見だと思う。
でも、日に日に大きくなるお腹。
もう、胎動もあった。

「産みたい」
「産むのなら、やり直すしかない」
そう、決心をしたのは、私自身だった。

頭をさげ続ける旦那に、もう一度だけ、チャンスを与えてみようと思った。

それで、ダメだったら、今度こそ、離婚であることをちゃんと話した上で、赴任地に付いていくことにした。

小さな命を守るために、私の人生をかけた選択だった。

家族は、大反対した。
友人も、涙ながらに、「同じことの繰り返しだからやめなさい」と引き止めてくれた。

それでも、「産んでもいい」といってくれたのは、旦那だけだった。
命を守りたいと思った私の、頼れる人は、皮肉にも、旦那しかいなかった。

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