月夜にヒトリゴト

コンサートの夜

三月の終わりのことだった。
元々私が大好きだった歌手のコンサートチケットを二枚持っていた。
相手がいなくて探していたこともあり、圭亮が駆けつけてくれた。
数曲しか知らないというのに・・・

早めに待ち合わせ、繁華街を“手つなぎ”デートした。
うまれて初めての体験だった。

圭亮は必死に、私へのプレゼントを探してる様子だった。

私はというと、物を贈られるのは、苦手なタイプ・・・
あまり喜べないので、申し訳なく思ってしまう。

分不相応のネックレスをもらってしまい、気が引けてしまう私に、「とても似合う」と褒めまくる圭亮。
私の大好きなブルーを必死に探してくれた圭亮に、まずは感謝した。

それからずっと、肌身離さずつけていた。
大切な思い出の品となった。

その後、コンサート会場に移動した。
バスに乗って、揺れるたびに引き寄せ、守ってくれる圭亮に、とてもあったかい気持ちになった。
そんななんでもない出来事が幸せだった。

魔法のような時間がたち、そのホテルの最上階でのディナーを予約していてくれた圭亮。
私は、これまたこういうのも苦手で・・・
今夜は特別ということで、言葉に甘えた。

たった今終ったばかりのコンサートの曲が流れていた。
私の一番大好きな曲が流れた時、涙が溢れそうだった。
外は、繁華街のイルミネーションと、その反対方向には、思い出の“海”が広がっていた。

二度と忘れられない、思い出深い一日となった。
コンサートの夜、私たちは初めて結ばれた。
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