月夜にヒトリゴト

圭亮からは、何も説明のないまま、時が過ぎた。
私は、絶対に、落ち着いたら、何か話してくれるに違いないと信じた。
圭亮だから、信じて待ち続けた。

時折、押し寄せる寂しさとやるせなさに、メールを送ってしまったりした。

その時に、必ず奥さんから「連絡はやめてくださる?」と高ビーなメールが来た。
「いい加減、恥を知りなさい」というその口調は、明らかに私を見下していた。
「訴えてやる」そうも言われた。

その時は、なんて、人だろうと思った。
人の痛みや心の弱さを知らない人なんだろうなって思った。

奥さんは奥さんで、過呼吸に悩まされ、苦しい思いをしていたと聞いた。
それはきっと、私のせいなんだと思う。

でも、どうして向き合って、ちゃんと話してくれないんだろう?という疑問符がずっとずっと頭を巡る。

恥って何?
ずっと考える。
私は恥ずかしいことなんて何もしてないと思った。

旦那にも、話せる。
子ども達にも、ちゃんと話せる。

私は、自分の気持ちにまっすぐでいたかった。
そして、真実を知りたかった。

ただそれだけだった。

圭亮を取り戻したいとか、まだ、将来があると思っていたわけではなかった。
ちゃんと終りたかった。

それが恥につながるとは思わなかった。


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