月夜にヒトリゴト

疑惑

数ヶ月経った今も、私は、シンジツを知らない。
きっと、このまま、何も語られないまま、私は、圭亮の不倫相手として、捨てられた女として、生涯を終るだけだと思う。

それでもいいのかもしれない。

それが私の選択したことなのかもしれない。

時々ふと思う事がある。

実は、圭亮は、奥さんに私の事を話してなかったんじゃないかと・・・
ただ、同窓会であった初恋の人と、浮気をしてしまったと告白はしたかもしれないけど、その人と将来を考えたとか、君と別れたいとか、そんなことは、一度も匂わせなかったんじゃないかと。

それならば、合点がいく。

奥さんのあの、高ビーな態度。
“恥”と罵られたこと。
「別れたがってる」元不倫相手の家庭を壊すなといわれたこと。
たかがこれしきのことで、取り乱して恥ずかしいと言われたこと。

宿してしまった子どものことなんて、言ってるわけもないんじゃないかと。

圭亮は、安全な場所で、不倫を楽しんでいたのではなかったかということ。
いや・・・
もしかしたら、ちょっとは迷ったかもしれないが、ちゃんと足元は、しっかり固めていたんじゃないかと。

思えば、圭亮は、法律の専門家だった。

何かにつけて、「証拠を出せ」と夫婦で迫ってくる。

メールだって、全権削除してる。
思い出の品も送り返した。

圭亮は、こんなこともあろうかと、安全な策を練っていたのだろうか?

私の知らない圭亮は、そんな男だったのだろうか?
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