月夜にヒトリゴト

逢いたい

4月末に、研修でこちらに来るのは知っていた。
元々、デートの約束をしていたから・・・

こうなってしまった以上、叶うことのなくなったその約束。
でも、圭亮は、時間を作ってくれるはず。

なぜか、そう固く信じた。
少しでもちゃんとあって、話がしたかった。

ちゃんと終りたかった。

圭亮の手によって、手繰り寄せられた運命。

ちゃんと、圭亮が終らせるべきだった。

そのくらい、私にも時間を割いてもらえると、そのくらいの配慮はあるはずと、信じてやまなかった。

連絡は来なかった。
私は、何度も電話をかけ、メールを送った。
途中から電源が切られた。

それでも最後まで諦められなかった。

いよいよ、帰る時間だと言うときに、どうしても一言伝えたかった。
「それが答えなんだと思うようにするよ」
ただその一言が伝えたかった。

奥さんが出た。
すごい剣幕で、「何を考えてる?」「恥を知れ」「訴えてもいいのね」そう叫び続ける。

私は、なぜ、そんな仕打ちを受けるのか分からなかった。

もう限界だった。
誰かに聞いて欲しい。

さっちゃんに連絡を取っていた。
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