月夜にヒトリゴト

署名捺印

圭亮のかえられたメアドを知ったのは、そんなときだった。
お盆に地元で同窓会を開くからと、先生方や幼馴染に連絡をとっていた。

何かをしないと気が狂いそうだった。

ご近所で育ち、遠い親戚でもある、拓己に、「男の子達との連絡を取って欲しい」とメールすると、「圭亮の方が話し早いよ」と、メアドを教えてくれた。

何ヶ月ぶりかに知った圭亮のメアド。
奥さんがかえてしまったと言うメアド。

指が動いた。
「私はいつまでほっとかれるの?」
そんな文面だったと思う。

翌日早朝、奥さんから「しつこい」「迷惑をしてる」「恥を知りなさい」という言葉の羅列。
「あなたのおかげで、夫婦として、よりよい関係が復活してる」という文面が目に入った。
落ち着いてるなら、なぜ、私は、何も説明も受けずにほっとかれてるの?
もう、頭がグラグラしてきた。
何度目かの返信で、余計な一言を添えてしまった。
命を宿していてだめになったこと。
圭亮は、私だけでなく、風俗にだって通っていたこと。
ついついカッとなって、奥さんに言ってしまった。

その後、あまりにひどい、奥さんの仕打ちに、着信拒否をした。

週明けに、圭亮本人から荷物が届いた。
思い出の品とともに、「金輪際関わりを拒否する」「君との将来を一度も考えたことなどない」「愛なんて感じた事もない」その言葉とともに、署名捺印がしてある紙切れが一枚添えてあった。

ひどすぎる。
ひどすぎる。

一日中、繰り返し読んでは、そう唱えた。

私はその日、吐き続け、とうとう、救急車で運ばれ、入院した。
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