月夜にヒトリゴト
秘密
幼い頃から、ずっと胸一つにおさめていたことが、互いにあったことを、その後のやり取りで初めて知った。
そういえば、悪がきだった圭亮も、時々、一歩引いたとこにいたかもしれない。

私もそうだった。
賑やかに騒いだり、輪の中心にいたり、皆に全てを話せるほど心を開いていなかった。
兄弟姉妹のような幼馴染だったが、そうだからこそ、言えないことがあった。

心の中に、そんな秘密を抱えてる人は、少しだけ控えめかもしれない。
何事も、客観的というか、冷静というか、一歩引いてしまう。
間を置いてしまう。
自然とそういう生き方を身につけてしまう。
望むと望まざると、いつまでも子どもでいる事ができないというか、急いて大人な部分が成長してしまうのかもしれない。

そういう意味での、“心の闇”が、互いにあったことを、打ち明けるのに時間はかからなかった。

圭亮は、一般的な会社員の家庭に育ってる子どもだった。
お姉さんが一人いる。
母親も働いていたので、経済的には裕福だったはずだ。

私の憧れに近い家族だと思っていた圭亮一家。
それでも、悩みがあるとは、なんとも切ない話である。

我が家は、自営業で、祖父母も同居し、5人兄弟という大家族。
狭い家に肩を寄せ合い暮らしていた。
賑やかであたたかい家庭には違いなかった。
それでも、気候に左右される仕事だったため、生活に安定はなく、経済的には苦しい暮らしを余儀なくされていた。

幼馴染であり、9年間もほぼ毎日顔を合わせていながら、互いの抱える“心の闇”を知らずに、“笑顔”を本物だと信じてやまなかった。

私たちは、互いの“心”に立ち入る勇気もなく、そんな余裕も持ち合わせていない子どもに過ぎなかった。
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