このキズで俺はお前を縛る
「言わねえよ」

「どうして?」

「言って…どうするんだよ
兄貴にどう言えばいいんだよ」

俺は、人の女をとるような男とは思われたくないんだ

雪乃は好きだけど

一線は越えないんだ

越えちゃいけねえんだよ

「ねえ、言ってよ
聞きたいよ」

雪乃が俺の腕にしがみついた

「お…おいっ!
腕に…捕まるな!」

雪乃の体重で、ハンドルが勝手に回った

ちょ…やばい

車が

ハンドルが回り、タイヤが動く

俺の視界には……人んちの塀が見えた

俺は雪乃を守るように多いかぶさった

…とこまでは記憶がある

が、それ以降の記憶は全くなかった
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