このキズで俺はお前を縛る
俺の指先は、雪乃の傷をなぞった

雪乃の肩がびくんと動いた

「あ…わりぃ」

俺は雪乃の視界に指を見せると、すぐに謝った

「痛かったか?」

雪乃が首を横に振る

『びっくりしただけ』

「そっか
悪いな
傷跡が見えたから、つい…な」

俺は笑顔をつくった

『茶佑君の傷は?』

「見なくていい」

『見たい』

「見るなよ
痛々しくて、他人には見せられねえ」

…って聖一郎さんには見られたけど

とくに何も言われなかったなあ

聖一郎さんは大人だから、気にしてても口にしないだけ、か

< 48 / 55 >

この作品をシェア

pagetop