エージェント・レイ‐狂人の島‐
ひたすらに走り、港湾内に駆け込む。

定期船乗り場まではもうすぐ。

助かる。

私の表情には安堵が浮かんでいたに違いない。

しかしその安堵は、一瞬にして脆くも崩れ去る。

曲がり角を曲がった瞬間。

「!?」

私は絶望的な光景を目にした。

燃え盛る定期船。

群がる暴徒。

その中心には、一塊に追い詰められた定期船の乗組員。

彼らは跪き、自分達を取り囲む暴徒達にひたすらに懇願する。

それは命乞いか、それとも何か別の願い入れか。

離れた場所から見ている私には、何を言っているのかまでは聞こえない。

だが、暴徒の一人はそんな乗組員の申し入れも無視して。

「!!」

手にした鉈を乗組員達に振り下ろした。


< 26 / 130 >

この作品をシェア

pagetop