エージェント・レイ‐狂人の島‐
行くアテもない。

安全な場所もない。

身を隠す場所など、皆無。

すっかり呼吸は上がってしまったが、足を止める暇などなかった。

逃亡を続ける途中でも、路地から、建物から、次々と暴徒は姿を現し、手にした凶器で私を襲ってくる。

その表情は楽しんでいる風でも、殺意に駆られている風でも、興奮している風でもない。

無表情。

感情が感じられない。

ただ作業的に、淡々と。

『見つけたから殺す』

そんな無機質なものを感じた。

日常生活の一部として襲撃し、殺害する。

そんな感じすらした。

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